夏川夕の作家生活

歴史と異文化をテーマに小説を書いています。出版賞に挑戦中。

ふるさと納税で歴史を応援する

こんにちは。

夏川夕です。

 

今週のお題」【ふるさと納税】、歴史学でどうやってやったものか考えていたのですが、ふと、歴史学的にふるさと納税するならどういう感じになるのかなと思いました。

そもそもふるさと納税とは、本来居住地に納める住民税の一部を、住民票を置いていない地域に納め、その返礼として、その地域のおいしいものや特産品、あるいは日用品などをもらい受ける制度です。普通に住民税を納めていたのでは返礼品はもらえませんから、納税者にとっては利用した方が得な制度、そして住民の少ない地域にとってみれば、返礼品次第で居住者数よりも多くの納税額が見込めるので、利用しがいのある制度、それがふるさと納税というわけです。

地域に納められた税金がどう使われるのか、私は詳しいことは知りませんが、その一部は間違いなく、郷土博物館や観光振興に使われていることと思います。

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北海道開拓の村。開拓地でありながら、ふるさとらしさもある博物館です。

日本の国土は、その津々浦々に至るまで、人の訪れなかったところはないのではないかと思うほど、どこにでも昔の誰かの足跡があり、言い伝えがあります。どんな小さな町にも、「○○ゆかりの地」「○○古戦場跡」みたいな看板が出ていたりしますよね。それが案外教科書に載るような大事件の端緒だったりして、歴史はすべてつながっているんだなあと感じさせられもします。

そういう小さな、車に乗っていれば通り過ぎてしまうような歴史。そういう歴史でも整理・研究し、保全していくのが、博物館の役割です。

私の肌感覚ですが、国や地域が運営する博物館の役割は、年々大きくなってきているように思います。なぜなら、昔はその地域の有力者の家で代々伝えられていたような品物が、ものが古くなりすぎたり、あるいは家が断絶するなどして、守り切れなくなってきているからです。

実際、私の親類に、江戸時代、ある藩の重役をしていた家があります。ところが昨今、事情があって、今の代で家が途絶することになったのです。伝えられてきたもろもろの品々をどうするのだろうと思っていたら、博物館へ寄贈することになったということでした。話に聞くだけなら、もったいない、親類が引き取ればいいのにと思うかもしれませんが、引き受ける気持ちはあっても、そういう伝えられてきた品物というのは、普通の民家にはなかなか収まりきらない量ですし、保全の手間を考えると、博物館に寄贈した方が、人間にとっても品物にとってもずっとよいと思います。

古い品物は、その素材にかかわらず、ただ置いておくだけではどんどん劣化していってしまうものです。湿気、人の肌の脂、害虫、かび、光、そんなものから遠ざけながら、常に空調管理された環境に置いておかなければなりません。それに、ただ民家の物置にしまい込まれたままでは、誰にも知られずに朽ちていくばかりです。博物館が持つ保全のノウハウや設備は民家に比べればずっと充実しています。素人にはがらくたに見えても、玄人が見れば、研究に大きく寄与する品物かもしれません。

では博物館に寄贈した品物は未来永劫守られるのかというと、そう簡単な話でもありません。品物をいろいろな害から守るには、温度や湿度を適切に保ち、害虫などの入らない設備を整え、設備そのものを維持する必要があります。それらを整理し、研究するにも人手がいります。こうしたことすべてに、当然お金がかかってきます。お金がなければ、博物館は閉館してしまい、残された品物たちは行き場がなくなります。

それでは、博物館はどうやってその維持費・研究費を得ているのでしょうか。

収入源の一部は、観覧料です。博物館は、研究機関・古いものの保全機関である一方、観光地の顔も持ちます。観光ブックなどを見ると、たいていその地域の博物館が、いくつか紹介されているものですよね。博物館はその地域の歴史を伝えているのですから、観光の門とも言えるわけです。

しかし、博物館という看板を漫然と掲げているだけでは、そう多くの客入りは期待できません。やはり観光地というからには、何かしら人を惹きつけるような、派手で貴重なものが必要です。そんな目玉があってこそ、観光客の動員も見込め、観覧料の収入だけで設備を賄えるようになるかもしれません。しかし、そんな都合のいい歴史が、どの町にも転がっているわけではありません。

そこで、演出を凝らすことが必要になります。歴史そのものに吸引力が少ないなら、その演出に趣向を凝らして、観光客を呼び寄せるわけです。ジオラマの設置、舞台作品や映像作品の上演、定期的な特別展、子供向けの企画など、博物館の工夫はさまざまです。

少し話はそれますが、私はジオラマのある博物館が大好きです。江戸東京博物館大阪歴史博物館にあるような、等身大の街並みが再現されたものも好きですし、小さな博物館にあるような、人形で箱庭のように往時を模したジオラマも好きです。厳密にはジオラマではありませんが、江戸東京たてもの園明治村のような、移築物でできた施設には、しばしば一日散歩に行きます。ジオラマにすると、ただ品物を並べた陳列棚からは見えてこない、昔の空気感やざわめきといったものが聞こえてくるような気がします。一種のタイムトラベルですね。

そういうジオラマの設置にも維持にも、どうしてもお金はかかります。他の演出でも同じことです。しかし派手な演出がなければ、そうそうたくさんのお客さんの入りは期待できず、したがって観覧料も入りません。にわとりが先か卵が先かのような話ですが、卵がなければにわとりは生まれない、つまり、お金がなければ、演出を凝らすこともできないのです。

古いものを保全し、伝えていくためには、博物館が必要。博物館が設備を維持していくには、資金が必要。博物館が資金を得るためには、観覧料が必要。観覧料の収入を上げるためには、観光客が必要。観光客を引き寄せるには、演出が必要。ここで演出をするには資金が必要、とループしてしまうのですが、そのループを打ち破るのが、住民税、ひいてはふるさと納税というわけです。

好きな博物館を応援する、好きな歴史を盛り立てる、そういう目線で、ふるさと納税の納税先を考えてみるのも一興ではないでしょうか。私は今、アイヌを勉強したいなと思っているので、北海道や東北を中心に、ふるさと納税を考えています。実際に遠方の博物館へ足を運べる日を、心待ちにして。

 

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