夏川夕の作家生活

歴史と異文化をテーマに小説を書いています。出版賞に挑戦中。

歴史学を学ぶ人へ、外国語習得のすすめ

こんにちは。

夏川夕です。

 

今週のお題】は、「#買って良かった2020 」。歴史学を学ぶ上で買ってよかったもの……と考えると、私はフランス語かな、と思います。今年、フランス語の基礎を、半年間ほど集中して学んでいたのです。

この記事で夏川夕がはじめましての方は、歴史学を学ぶのに、なぜフランス語?と思われるかもしれませんね。でも、歴史学を学ぶ人間こそ、外国語を学ぶべきだと、私は考えています。

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歴史学を学ぶ際、ともに外国語を学ぶべき理由を、私の体験からお話しします。

私は、中学時代をアメリカの現地校で送りました。当然、授業もアメリカの普通の義務教育です。日本の必修科目である国語・数学・理科・社会をアメリカ基準で学んだわけですが、その中でも社会科目が、私にはおもしろくてたまりませんでした。そのポイントは2つあります。

1つは、地理の科目として、アジアの一か国である日本を、アメリカ目線で学んだことです。日本の作物や気候、文化などを、中国やカンボジアなどと並べて学ぶわけですね。自分がよく知っている日本を、外国という枠で学ぶのが、なんだか新鮮な視点で面白かったのです。

2つめは、歴史科目として、第二次世界大戦を、アメリカ目線で学んだことです。別に嫌な思いをしたわけではないのですが、日本ではさんざん「悲惨な戦争」として学んだ第二次世界大戦を、「アメリカがいかに日本を抑え込んでいくか」という視点で学ぶのは、もともと歴史が好きだった私には、わくわくするほど面白い体験でした。

この2つの経験の、まさに総まとめとなったのが、歴史科目で提出しなければならないレポートでした。レポートのテーマは独立戦争からベトナム戦争まで、さまざまなアメリカ史からとられていたのですが、好きなテーマを選べるわけではなく、先生が各生徒にランダムに振り分けていくやり方でした。そこで私にあたったテーマが、「パール・ハーバー」だったのです。クラスで唯一の日本人である私にあたるなんて、冗談みたいな話ですが、先生は私をとてもかわいがってくれていたので、本当に偶然だったのだと思います。

レポートを書くにあたり、私は日本のことを悪く言うのは嫌でしたし、といって、日本擁護のようになるのも嫌でした。ですから、日本語と英語の両方で本やウェブサイトを調べ、できるだけ中立な立場をとるよう、気を付けました。書いたレポートの詳細は覚えていないのですが、とにかく日本語で調べたことを英語で調べ、英語で出てきた結果をまた日本語で調べ、と、両言語での調査を徹底したことを記憶しています。

レポートの出来はともかくとして、この経験は、私の人生に大きな影響を与えました。歴史で大事なのは、双方の言い分と背景を、よく理解すること。Aの言い分だけを聞いていては、Bの背景はAのフィルタを通してしか見られず、本当の事実は見えません。そしてAが自らの故郷であり、Bというのが言語の異なる国であればなおさら、この傾向は強くなります。Bの情報が、結局Aのフィルタを通してしか入ってこないからですね。ですから、Bの言葉で書かれた生の情報を得ることが大切になってくると私は考えています。

これに加えて、第三の立場であるCの存在も歴史学を学ぶ上では重要です。第二次世界大戦で言えば、Aが日本、Bがアメリカとするなら、Cは中国やドイツ、オーストラリア、イギリス、ロシアなどがあたるかと思います。Cから情報を得ることにより、AのフィルタもBのフィルタも通さない、また別の観点を得ることができます。こうして多角的な情報を積み重ねていくことにより、より事実に近い、精度の高い歴史観測をすることができると思うのです。

こうしたAに対するBやCの生の情報を得るためには、外国語を学ぶよりほか、ありません。もちろん翻訳された資料を探してもよいのですが、それだと翻訳されるまで歯がゆい時間を過ごすことになりますし、翻訳それ自体が間違っていることもあります。何より、自分で苦労して読み取り、新しい情報を得たときの爽快感は、一度知ったら病みつきになります。

幸い、私は英語の史料は比較的気軽に読めます。ですから、例えば思いがけずメルボルン万博のレポートの実物に出会った時も、一晩で読みたい分だけ読むことができました。これくらいの読解力を、中国語やロシア語にも広げていったら、どんなに世界が変わることかと思います。

残念ながら、私は語学の才能に恵まれているわけでもありませんし、語学の勉強が大好きで楽々進むというわけでもありません。むしろ根気がないので、その点では人一倍苦労しています。しかし以前の記事にも書いたように、私の手元には、徳川幕府が日本紹介キャンペーンをした、パリ万博のレポートの現物があります。もちろん、記事はすべてフランス語です。この分厚いフランス語のレポートをどうにか読みたくて、今年ようやく、重い腰を上げてフランス語の基礎の基礎を学びました。基礎の基礎だけとはいえ、それでも半年もやると、簡単な文章なら読めるようになります。時間をたっぷりとって辞書を使えば、多少込み入った文章にも、食らいついていくこともできます。フランス語を学び始めて3か月めには、江戸時代のパリ留学生がフランス語で書いた日記を、初めて翻訳でなく原文で読みとることができ、嬉しくてうれしくて、思いがけず涙があふれたほどでした。

 

歴史学、とりわけ日本で日本史学をやるには、語学は必要ないと思う人も多いかもしれません。もちろん、語学がわからなくても、研究に大きな支障はないでしょう、しかし、語学を学べば学ぶだけ、情報のソースは多くなり、結果、多角的に歴史を見ることができ、その分、新しい事実や観点を得ることができるのです。それは、戦史でなくても同じです。たとえば、鎖国中の日本について、アメリカやロシアがどう研究していたか、そんな資料が残っているとわかったら、読んでみたいとは思いませんか?日本のどこに価値を見出して開国を求めてきたのか、それは、日本語以外の史料でしか、読み取ることはできません。

歴史学を学ぶときは、多言語で学ぶと面白い。これは私が実感覚として得ている、一つの真理です。

小学校から英語を学ぶ時代です。英語を始めとする外国語は、コミュニケーションツールであるのみならず、かえって母国を知るのにも重要なツールであることを、広く知ってもらえたらいいなと思います。

 

夏川夕

 

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