夏川夕の作家生活

歴史と異文化をテーマに小説を書いています。出版賞に挑戦中。

『もののあはれ』。「地球都市」の世界観。

こんにちは。

夏川夕です。

 

私は、外国人が書いた、日本文化や日本人の物語が好きです。有名どころだと、『大君の都』や『Sayuri』とか、映画なら『終戦のエンペラー』とか。外国人の視点で見る日本は、私たちがよく知っていることでも意外な見方をされていたり、新しい発見が多くて楽しいんですよね。

Twitterでそんな本を教えてほしいとつぶやいたところ、ケン・リュウの『もののあはれ』を教えていただきました。ケン・リュウは、何となく有名な作家として聞いたことはあったけれど、本は1冊も読んだことがありません。早速、図書館で借りて読んだところ、今まで読んだことのない世界観に衝撃を受け、新しい扉を開けてしまった気分になりました。アジアと欧米の世界観のミックスとでもいうのか、過去と未来を同時に見ているというのか。

ケン・リュウは、中国生まれのアメリカ育ちとのこと。そのせいか、14編からなる短編集のどの物語にも、中国的・アジア的な哲学と、人種問題、言葉の問題といった、グローバルな課題がさりげなく提示されていて、物語として面白いだけでは済まされない、一種、アジア人として胸を突かれたような感覚がありました。

今回、いつものようなあらすじは書きません。なぜなら、『もののあはれ』は主人公が起承転結によって解を得るものではなく、物語を通して、作者の世界観を描き出したものだから。まるで、日本の俳句です。

主人公ヒロトは日本人として、そして人類として、とても誇りに思える人物に描かれています。作者が「日本人」をこのように解釈してくれていることは、日本人としてとても喜ばしいことです。

悲劇にもじっと耐え忍ぶ日本人の美徳と、捨て石が他の石を生かす碁の世界観、そして「あきらめない」ことを信条とするアメリカのフロンティア精神とが見事につながり、人類ならば誰もが願う最終目的へと収束していきます。その無駄のない文章は、まるで映画を観ているように目の前でシーンが展開して、読み終えた後、自分が暗い宇宙ではなく、陽の差し込む窓辺にいるのが不思議な気分になるほどでした。

私が読んだ『紙の動物園』という短編集には、『もののあはれ』のほかにも、歴史のifもの(これも日本が中心です)や、中国とアメリカの生きる価値観の相違などが、誰が正しいとも言えない、中立な神の視点で描き出された短編が収録されています。

 

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
 

 

「グローバル」というのとも違う、まるで未来からタイムスリップしてきたような、不思議な世界観の物語。ケン・リュウは、「地球都市の世界観」とでも言いたいような語り手です。近いうちに、『もののあはれ』を原文で読んでみようと思います。

 

夏川夕

 

ブログランキング参加してます。
よかったら、クリックしてください(*'▽')

にほんブログ村 小説ブログへにほんブログ村 本ブログ 読書日記へ