夏川夕の作家生活

歴史と異文化をテーマに小説を書いています。電子書籍にて出版予定。

歴史をアウトプットする

こんにちは。

夏川夕です。

 

 歴史は、よく究極の暗記科目だと言われます。確かに、誰が何をしたとか、いつ何が起きたとかいったことは、覚えるほかありません。数学は公式を忘れても自分で無理やり答えを導き出せる場合もありますが、人物名や年代は、考えても出てきませんものね。

でも本当は、歴史こそ、アウトプットがとても大切な学問です。私はそう考えています。

 

歴史がアウトプットの学問だと気づいたのは、高校生のときです。私は受験勉強のため、日本史の問題集を毎日解いていました。使っていたのは『一問一答日本史』など、事件名称や年代を記憶に定着させるためのものです。一日も休まずに勉強していたのですが、いざ模試を受けてみると、事件名称を忘れてしまったり、年代が前後してしまったりして、たいていが7割くらいの結果でした。

私は大学に入ったら日本史学をやると決めていたので、7割では不安だと思い、日本史の先生に相談しに行きました。先生は、こう言いました。

「教科書を読みなさい」

教科書を読んだって、重要な名称が何かわからないし、いつのできごとかわかりにくいし、受験勉強には意味ないじゃん。私はそう思いましたが、先生に言われたので、教科書を読みはじめました。ささやかな抵抗として、教科書上の重要そうな単語は塗りつぶし、赤シートで隠しながら。

ところが次に模試を受けてみると、今まで苦手だった、歴史事象を起こった順に並べ替える問題や、なぜ事件が起きたのか理由を述べる記述問題などが、驚くほどできたのです。点数は9割を超えました。

今まで個々に記憶するだけだった歴史事象の名称や年代が、教科書を読むことによって、事象Aが事象Bにつながり、事象Bから事象CとDが生まれて……というように、数珠つなぎになったからです。つまり、歴史を一つの物語のようにして読むことによって、あらすじが頭の中にできたのですね。

それからは、日本史の模試はいつも満点をとり、センター試験でも当然10割を取得し……と、そんなうまい具合にはいきませんでしたが、8割~9割はキープできていたように思います。教科書を読むことにより、全体の流れを理解することが大切だと気づいたからです。それまで事件名や年代や人物名を書いていたノートには、AがこうしたためにBが起きて、というふうに、流れを書くようになりました。

つまり、歴史をアウトプットしていたわけです。

さらに強くアウトプットの効果を実感したのは、大学を卒業してからです。日本史を勉強したことがない帰国子女の友人に、日本史をいちから教えたことがありました。これは私にとっても、いいテストでした。「なんで?」を連発する彼女に説明していると、ちゃんと理解できていない部分は、自分で話していてつじつまが合わなくなってくるからです。このとき、歴史はアウトプットの学問なのだなあと改めて思いました。

 

 今はもう、受験時にあれだけ一生懸命に記憶した事件名称や人物名はすっかり忘れましたが、事件の原因や経緯は覚えているので、だいたいいつごろのできごとで、誰が絡んでいるのか、ということは何となくわかります。これは、時代小説を書く私には、大きな財産です。

歴史というのは、結局人類の物語のようなものです。膨大な登場人物がいて、無数の事件が起こる物語です。しかし、どれ一つとして個々に独立しているものはなく、すべてつながっているのです。

時代小説は、そのほんの一部分を取り出し、面白く脚色してアウトプットする作業です。そこに、作者なりの見解や、希望や、主張を盛り込みます。これが、大学受験から十数年、私の現在の歴史のアウトプット方法です。